貝輪の考古学

貝輪の考古学

日本列島先史時代におけるオオツタノハ製貝輪の研究

  • 忍澤 成視/著
  • B5判上製
  • 384頁
  • 12000円+税
  • ISBN 978-4-7877-2305-5
  • 2024.03.29発行
  • [ 在庫あり ]

書評・紹介

紹介文

装飾品である貝輪は、そのかたち・色・艶・質感から古来より多くの人々を魅了してきた。本書は、とくにオオツタノハ製貝輪に着目し、縄文時代から弥生・古墳時代にかけての人々と貝との関わりについて、貝塚や墓などから出土した遺物と現在の生息状況の調査結果から論じる。装飾品に使われた貝を調べることで、当時の習俗・交易ルート・社会形態などさまざまな事柄がみえてくる。

目次

第Ⅰ章 食用の貝と利器用の貝
1 食糧としての貝:貝塚にみる食用貝
2 道具の材料になった貝:「搬入貝」の識別
3 貝製装身具:出現の古さと広範な分布の意味

第Ⅱ章 東日本における縄文時代の貝輪
1 縄文時代の「貝輪」の特徴
2 ベンケイガイ製の貝輪
3 貝輪素材変遷の理由
4 貝輪装着にかかわる習俗
5 各集落内で行われた「貝輪製作」
附節 特異なベンケイガイ打ち上げ地:千葉県鴨川市における追跡調査の記録

第Ⅲ章 東日本における弥生時代の貝輪
1 出土遺跡と貝輪の様相
2 弥生時代に使用された貝輪素材の特徴
3 現生貝調査成果からみた東日本弥生時代の貝輪の様相と展開

第Ⅳ章 東日本におけるオオツタノハ製貝輪
1 「西の貝の道」と「東の貝の道」
2 伊豆諸島を起点としたオオツタノハ製貝輪生産
3 南海産の「貝材」の流通と房総半島集落の役割
4 オオツタノハとともに伊豆諸島から運ばれた貝
5 南海産の貝製品を模造した土製品
6 タカラガイ・イモガイ製品にみる社会的役割

第Ⅴ章 九州地方における縄文時代の貝輪
1 九州地方出土貝輪の様相
2 東名遺跡出土の縄文時代早期における貝製装身具
3 飛櫛貝塚出土の縄文時代後期における貝製装身具
4 山鹿貝塚出土の縄文時代後期における貝製装身具
5 佐賀貝塚出土の縄文時代後期における貝製装身具
6 黒橋貝塚出土の縄文時代後期における貝製装身具
7 麦之浦貝塚出土の縄文時代後期における貝製装身具
8 柊原貝塚出土の縄文時代後期における貝製装身具
9 川上(市来)貝塚出土の縄文時代後期における貝製装身具

第Ⅵ章 南西諸島におけるオオツタノハ製貝輪
1 広田遺跡と「西の貝文化」
2 種子島における縄文,弥生・古墳時代のオオツタノハ製貝輪
3 大隅諸島における現生オオツタノハの調査
4 トカラ列島および奄美諸島におけるオオツタノハ製貝輪と現生貝調査
5 沖縄諸島におけるオオツタノハ製貝輪と現生貝調査

第Ⅶ章 考古学・生物学的調査が明かすオオツタノハ製貝輪の実態
1 オオツタノハ採取と貝輪加工
2 現生貝調査からみた広田遺跡の貝輪の解釈
3 現生貝調査からみたカサガイ系貝輪の評価
4 西日本におけるオオツタノハ製貝輪の流通
5 最高峰の威信財としてのオオツタノハ製貝輪
結びにかえて:残された研究課題と展望

出版社からのコメント

貝塚を深く知るための必読書です。
荒波打ち寄せる離島の岩礁でオオツタノハを採取する冒険譚でもあります。

著者紹介

忍澤 成視(オシザワ・ナルミ)

1962年千葉県生まれ
早稲田大学大学院文学研究科史学・考古学専攻修士課程修了 博士(文学)
市原市教育委員会文化財課チバニアン整備推進係副主査(再任用)
〈2024年4月より〉
千葉市教育委員会埋蔵文化財調査センター主任研究員,東京大学大気海洋研究所特任研究員,早稲田大学文学学術院非常勤講師
日本考古学,おもに生物学的視点から貝を素材とした装飾品類を研究。縄文から古墳時代まで続く「日本列島最長の威信財」とされるオオツタノハ製貝輪(腕輪)の謎を解明するため,列島各所の島嶼部を20年以上にわたって単独調査。2021年,第46回「藤森栄一賞」受賞。2023年,NHK-BSP「英雄たちの選択 海の縄文人」に出演。著書に『貝の考古学』(ものが語る歴史22,同成社,2011年)、『房総の縄文大貝塚 西広貝塚』(シリーズ「遺跡を学ぶ」80,新泉社,2011年)、『貝輪の考古学』(新泉社、2024年)などがある

関連書籍

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