ことばの杖 李良枝エッセイ集

ことばの杖 李良枝エッセイ集

  • 李良枝/著
  • 四六判
  • 244頁
  • 2200円+税
  • ISBN 978-4-7877-2200-3
  • 2022.05.22発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

今からなのだ、と思う
生き行くためのことばの杖

韓国語で、愛は사랑(サラン)と言い、人は사람(サラム)と言う。そして人の生そのものを삶(サルム)と呼んでいる。この世界の成り立ちと、この世界をひきうけていかざるを得ない人間にとって、何よりもかけがえのない愛、人、生、という言葉が、사(サ)‐ㄹ(ル)という同じ音から始まっている。同じ音でとらえずにはいられなかった祖先たちの思いを、私は信頼し、尊敬したい。そして同じ音が繰り返される中で、言葉そのものにためこまれてきた力、としか言えない何かを、これからも確かめ続けていきたい。
——本書より

三メートルもの長さの白いスゴンはあの世とこの世を結び、生き行く者たちの長寿を祈るという願いがこめられているのよ、と姉は教えてくれた。没後三十年がたって、姉のエッセイ集が発行される。ああ、ここで姉のことばはまた生まれ変わることができた。
——李 栄「姉・李良枝のこと」より

没後30年。37歳で亡くなった芥川賞作家の初エッセイ集。日本と韓国のはざまを生き、ふたつの民族性の間で引き裂かれる若き日の苦悩や、韓国に留学し伝統的な踊りや音楽をまなび、ひとりの女性として自身をみつめる珠玉の文章。妹の李栄さんが姉の最後の日々を綴ったエッセイも併録。

目次

詩 木蓮に寄せて

1 旅の風景について
木蓮によせて
富士山
「寿」

2 韓国の踊りについて
巫俗伝統舞踊─멋(モッ)の息吹
韓国巫俗伝統舞踊

3 文学と文化について
愛を知り生の意味を確かめる
対談 湖畔にて 大庭みな子
恨とほほえみ
私の「ゲーテとの対話」
私たちのDISCOVERYを求めて

4 はざまを生きることについて
わたしは朝鮮人
散調の律動の中へ
若者に伝承されていく朝鮮人蔑視


受賞のことば
資料 私

姉・李良枝のこと  李 栄

初出一覧

著者紹介

李良枝(イ・ヤンジ)

作家。1955年3月15日、山梨県南都留郡西桂町で在日韓国人の両親のもとに生まれる。早稲田大学社会科学部中退。大学在学の頃に伽倻琴、韓国語、韓国舞踊を習い始め、1980年から東京と韓国の往来を繰り返す。ソウル大学国語国文学科に入学し、小説「ナビ・タリョン」を文芸誌『群像』に発表。1988年にソウル大学を卒業し、翌年に小説「由熙」で芥川賞受賞。1992年、東京で長編「石の聲」の執筆に専念していたところ病に倒れ、5月22日に急逝。享年37。著書に『由煕 ナビ・タリョン』『刻』(以上、講談社文芸文庫)など。

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