宇井純セレクション[3]
加害者からの出発
- 四六判上製
- 388頁
- 2800円+税
- ISBN 978-4-7877-1403-9
- 2014.07.31発行
- [ 在庫あり ]
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書評・紹介
- 若松英輔氏評「犠牲者への連帯の決意」(「読売新聞」2014年11月2日)
- 若松英輔氏評「歴史と同時代を踏みしめる」(「京都新聞」2014年12月28日、ほか時事通信配信)
- 若松英輔氏「100分 de 名著『苦海浄土』」
- 松岡瑛理氏評(「週刊朝日」2014年10月3日号)
- 友澤悠季氏「ひもとく 人間としての言葉求め続ける」(「朝日新聞」2016年12月18日)
- 「朝日新聞」2014年7月27日
- 「東京新聞」「中日新聞」2014年8月10日
- 「沖縄タイムス」2014年10月21日、「琉球新報」2014年10月23日、ほか各紙(共同通信配信)
- 最首悟氏評(「図書新聞」2014年10月4日号)
- 「公明新聞」2014年11月24日
紹介文
水俣病をはじめとする公害の原因究明と被害者支援活動に取り組み続けた環境学者、宇井純。その足跡と思想の全体像をまとめた全3巻。公害問題に専門家はいない――巨大技術文明を乗り越えた、ゆるやかな適正技術のありようを提言する。
■桑原史成氏「チッソが極秘にネコ実験をやっていたデータを見せられまして、宇井さんは驚いていました」
「公害問題というのはだいたい専門の隙間から出てくる」――。
工場から水銀を流した加害者の一人、技術者としての悔恨を記し、巨大技術文明を乗り越えた、ゆるやかな適正技術のありようを提言する。
公害との闘いに生きた環境学者・宇井純は、新聞・雑誌から市民運動のミニコミまで、さまざまな媒体に膨大な量の原稿を書き、精力的に発信を続けた。本セレクションは、その足跡と思想の全体像を全3巻にまとめ、現代そして将来にわたって、私たちが直面する種々の問題の解決に取り組む際につねに参照すべき書として編まれたものである。
「私が少年の時から追い求めてきた化学という学問は、おそろしくバラバラな知識の集積であり、しかもひどく非人間的な行動をする人々の職業であることを見出した時は、本当に悲しかった。」
「技術者というのは悲しい職業である。おおむねまじめで、自分のやっていることを正しいと信じ、他人に利用されてとんでもない逆の役割を果たす。」
「所属する企業や大学などの組織をはなれ、あるいは経済体制をはなれたときに、一人の裸の人間としてどれだけ人間の生活に寄与することができるか。」
目次
宇井さんの歴史が動いた日――桑原史成
I ある化学技術者の足取り
私の十代
生え抜きの一化学者の反省
高分子研究を振り返って
経験の行商人、旅役者を目指して
環境汚染と私
一技術者の自己変革
II 住民運動の作る科学
技術者の歴史観
公害問題に現われた科学的方法論の限界
住民運動の作る科学
「科学信仰」を助長しないか
環境社会学に期待するもの
III 適正技術の考え方
運動が支える適正技術の開発
適正技術の考え方
賢治と適正技術
オルタ技術を広げる
IV 水とともに歩む――下水道と私
沖縄の“水"を考えたい
構造汚職ささえる公共経済学
政治と技術
下水道と私
滝沢ハム泉川工場の経験
V 沖縄の開発と環境
沖縄の水問題と取り組んで
沖縄の開発と環境
米軍基地と環境問題
VI 本と人に学ぶ
自作を語る――『公害原論』
著者の願い――『キミよ歩いて考えろ』
『キミよ歩いて考えろ』をぜひ
職業を決めた本――シェンチンガー著『アニリン』
心の書――石牟礼道子著『苦海浄土』ほか
イプセン、賢治に学びつつ
レイチェル・カーソンを読む――改読のススメ
『カネミ油症』――河野裕昭写真報告
私達が日常食べているものの正体――有吉佐和子著『複合汚染上巻』
足尾鉱毒事件の意味するもの――荒畑寒村著『谷中村滅亡史』
失われた天地復活の必要性――立松和平著『毒風聞田中正造』
絶対的無原罪の受難と再生――色川大吉編『水俣の啓示不知火海総合調査報告』
地域開発の幻想と現実――飯島伸子編『公害・労災・職業病年表』ほか
水を考える本
『森の人四手井綱英の九十年』を読んで――森まゆみ著
写真に込められた志
主要著作一覧
宇井純略年譜
解説宇井純さんが切りひらいた科学のかたち――宮内泰介