複雑な問題をどう解決すればよいのか

現場で生かす環境社会学の実践技法と知見

シリーズ 環境社会学講座 6

複雑な問題をどう解決すればよいのか

環境社会学の実践

  • 宮内 泰介/編
  • 三上 直之/編
  • 四六判
  • 296頁
  • 2500円+税
  • ISBN 978-4-7877-2406-9
  • 2024.03.10発行
  • [ 在庫あり ]

書評・紹介

紹介文

〈現場から考え、順応的に問い直し、問題の〈間〉をつないでいく実践〉

環境問題は複雑な問題の束である。
解決が難しく、そもそも何が解決なのかがわかりにくい、さらに何か解決したら別の問題が生まれる「やっかいな問題」である。
解こうとするほどもつれていく問題の「解決」とは何か、現場に根差して絶えず問い直し、試行錯誤をくり返すプロセスに環境社会学の実践技法と知見を生かしていく。

〈解こうとすればするほどもつれていく問題を、そもそも「解決」とは何かと問いかけながらほぐしつつ、試行錯誤するプロセスの中に「解決」がある。その過程では、何が「問題」であるかということも、絶えず問い直され、とらえ直される。
環境社会学において構想される問題解決とは、あらかじめ定式化された方法に沿ったスマートな問題の処理や、そのための方法の案出などとは対極にある、至って泥臭い営みである。
こうした試行錯誤を、現実の問題に即して立場の異なる人びとがともに行うには、どうすればよいだろうか。環境社会学の研究・実践の多くが、この問いをめぐって展開されてきたといっても過言ではない。——編者〉

【執筆者】熊本博之/家中 茂/森久 聡/岩井雪乃/山下博美/鈴木克哉/脇田健一/佐藤 哲/丸山康司/菊地直樹/嘉田由紀子/青木聡子/茅野恒秀

(書店発売開始日:2024年3月18日頃)

目次

序章 複雑な問題をどう解決すればよいのか——環境社会学の視点……宮内泰介

I 現場に根差して問題のとらえ方を変える
第1章 「生活」の論理から基地問題の解決を考える——辺野古住民が望む未来の選択へ……熊本博之
第2章 生業の論理から林業と中山間地域の課題を考える——「林業を始める若者たち」にみるボランタリーな生活組織への注目……家中 茂
第3章 話し合いから歴史的環境の継承とまちづくりの課題解決を考える——地域の伝統によって導かれた鞆の浦の町並み景観保全……森久 聡
コラムA 「よそ者」として地域に寄り添う——アフリカゾウ獣害問題の現場から……岩井雪乃
コラムB 防潮堤をめぐる地域の声と環境社会学の実践……山下博美

II 知識と資源を使って協働のプロセスを生み出す
第4章 多様な人材との共創で価値を転換する——地域に這いつくばって起こす獣がい対策のソーシャル・イノベーション……鈴木克哉
第5章 多層的なガバナンスから流域環境問題の解決を考える——琵琶湖流域における協働の試みから……脇田健一
第6章 統合知を生かして複雑な課題に取り組む——社会・生態系システムの本質的転換に向けて……佐藤 哲
第7章 社会実験による解決を考える——再生可能エネルギーの適地抽出に向けた住民参加の研究実践……丸山康司
コラムC 「評価」を使って問題を解決する——環境活動の「見える化」ツール……菊地直樹
コラムD 環境社会学の知見を政策の現場に生かす……嘉田由紀子

III 問題解決のための場をつくる
第8章 ミニ・パブリックスで公論形成の場をつくる——気候市民会議の試みから……三上直之
第9章 順応的な社会運動で解決を考える——原発反対運動支援の試行と模索を事例に……青木聡子
第10章 公共圏の活性化によって解決を考える——環境社会学者が社会に果たす役割……茅野恒秀

終章 小さな単位から出発する環境社会学の問題解決……宮内泰介・三上直之

出版社からのコメント

全6巻の「シリーズ 環境社会学講座」の最終巻です。
未刊の第4巻と第5巻は2024年度に順次刊行の予定です。

シリーズの詳細は下記URLをご覧ください。
https://www.shinsensha.com/news/5554/

著者紹介

宮内 泰介(ミヤウチ・タイスケ)

1961年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。北海道大学大学院文学研究科教授。専門は環境社会学。
主要業績:『歩く、見る、聞く 人びとの自然再生』(岩波新書、2017年)、『シリーズ 環境社会学講座 6 複雑な問題をどう解決すればよいのか——環境社会学の実践』(三上直之と共編著、新泉社、2024年)、『どうすれば環境保全はうまくいくのか――現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』(編著、新泉社、2017年)、『なぜ環境保全はうまくいかないのか――現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』(編著、新泉社、2013年)、『宇井純セレクション』(共編著、新泉社、2014年)、『実践 自分で調べる技術』(上田昌文と共著、岩波新書、2020年)、『かつお節と日本人』(藤林泰と共著、岩波新書、2013年)、『開発と生活戦略の民族誌――ソロモン諸島アノケロ村の自然・移住・紛争』(新曜社、2011年)、『半栽培の環境社会学――これからの人と自然』(編著、昭和堂、2009年)、『コモンズをささえるしくみ――レジティマシーの環境社会学』(編著、新曜社、2006年)、『コモンズの社会学――森・川・海の資源共同管理を考える』(井上真と共編著、新曜社、2001年)。

三上 直之(ミカミ・ナオユキ)

名古屋大学大学院環境学研究科教授。
主要業績:『気候民主主義——次世代の政治の動かし方』(岩波書店、2022年)、『リスク社会における市民参加』(八木絵香と共編著、放送大学教育振興会、2021年)、『「ゲノム編集作物」を話し合う』(立川雅司と共著、ひつじ書房、2019年)、『世界に学ぶミニ・パブリックス——くじ引きと熟議による民主主義のつくりかた』(日本ミニ・パブリックス研究フォーラムとして共訳、OECD Open Government Unit 著、学芸出版社、2023年)。

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