検証・新しいセーフティネット

生活保護制度だけでは救い切れない、生活困窮とは?

検証・新しいセーフティネット

生活困窮者自立支援制度と埼玉県アスポート事業の挑戦

  • 駒村 康平/編
  • 田中 聡一郎/編
  • 四六判
  • 264頁
  • 2500円+税
  • ISBN 978-4-7877-1907-2
  • 2019.04.25発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

独居老人、非正規雇用者、長期化したひきこもり、未婚の団塊ジュニア、介護離職した中高年失業者・・・・・・。
現代社会が抱える「社会的孤立や排除」の問題は、経済的困窮=貧困というくくりでは救えない。
そうした生活困窮者を救うために制定されたのが「生活困窮者自立支援制度」である。
本書では、この制度の前身となる埼玉県のアスポート事業(学習支援、就労支援、住居支援)を実施データをもとに検証し、生活困窮者が抱える様々な問題を明らかにするとともに、新たなセーフティネットである生活困窮者自立支援制度の現状と課題を明らかにした。
高齢化社会、人口減少と財政赤字という三重苦を抱える日本の社会保障制度が進むべき方向性について検証している。

目次

公刊に寄せて(上田清司埼玉県知事)

第1部 2000年代以降のセーフティネットの再編

第1章 生活保護制度と生活困窮者自立支援制度の改革動向(駒村康平)
1.はじめに――生活困窮者自立支援の展開と本書の意図
2.生活困窮者自立支援制度の改革動向
3.生活保護制度改革の概要
4.今日のセーフティネット論議に欠けているもの

第2部 データからみた困窮者像――埼玉県アスポート事業から
埼玉県アスポート事業とは(田中聡一郎)

第2章 埼玉県アスポートの取り組み(埼玉県福祉部 社会福祉課)
1.アスポート事業
2.アスポート事業の市への移管

第3章 アスポート就労支援の成果(四方理人・金井郁)
1.職業訓練支援員事業
2.支援対象者の属性と支援の効果
3.職業訓練支援員のヒアリングから見る支援の現場
4.就労困難者への就労支援――就労には結び付くが自立までは難しいこと

第4章 アスポート住宅支援の成果(岩永理恵・四方理人)
1.住宅支援事業
2.支援対象者の属性と支援の効果
3.無低利用者と住宅支援の意味

第5章 アスポート学習支援の成果(田中聡一郎)
1.学習支援事業
2.生活保護世帯の子どもたちの教育・生活問題
3.学習支援の成果――なぜアウトリーチが必要か?
4.学習支援の意義――子どもに直接届ける支援

第3部 困窮者制度の歴史的経緯
第2のセーフティネットから生活困窮者自立支援法へ(田中聡一郎)

第6章 就労支援の展開(金井郁・四方理人)
1.就労支援の2つの流れ
2.生活保護受給世帯の推移と自立支援プログラム
3.求職者支援制度の創設と展開
4.生活困窮者自立支援制度の創設と展開
5.就労困難者への支援の充実に向けて

第7章 住宅支援の展開と新たな動き(岩永理恵)
1.住宅支援とは――住宅確保と居住支援
2.無料低額宿泊所とその問題
3.生活困窮者自立支援法における住宅支援
4.住宅セーフティネット法と居住支援
5.新しい住宅支援に向けて

第8章 子どもの貧困対策、学習支援の展開(田中聡一郎)
1.子どもの貧困
2.子どもの貧困対策と学習支援の展開
3.子どもの貧困対策の現在――現金給付と学習支援

第4部 生活困窮者支援の現状と将来
生活困窮者自立支援制度の展望―その実施から初めての制度改正へ(田中聡一郎)

第9章 スタートした生活困窮者自立支援法(田中聡一郎)
1.生活困窮者自立支援制度の支援プロセスの評価枠組み
2.支援状況の評価
3.生活困窮者自立支援制度の成果と課題

第10章 生活困窮者自立支援の将来(話し手:駒村康平/聞き手:田中聡一郎)
1.2018年改正の意義
2.生活困窮者支援の未来

あとがき――生活困窮者自立支援制度充実への期待(駒村康平)


参考文献・データ・資料
初出論文一覧

出版社からのコメント

非正規雇用、未婚、年金保険料未払い、低い持ち家率といった問題を抱えた団塊ジュニアが退職し始める2040年以降、日本の社会保障制度は機能しなくなると言われています。新たなセーフティネットともいえる生活困窮者自立支援制度は、まさに将来の危機を見据えた社会保障制度構築のための第一歩といえるでしょう。
本書は、埼玉県アスポート事業の検証から、生活困窮者制度の成立過程、2018年度の制度改正と今後の展望までをまとめた、生活困窮者制度の全てがわかる一冊です。

著者紹介

駒村 康平(コマムラ・コウヘイ)

慶應義塾大学経済学部教授、ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター長
1964年生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。
国立社会保障・人口問題研究所、駿河台大学経済学部助教授、東洋大学経済学部教授などを経て、2007年から慶應義塾大学経済学部教授。厚生労働省顧問、社会保障審議会委員(年金部会、年金数理部会、生活保護基準部会部会長、障害者部会部会長、生活困窮者自立支援及び生活保護部会部会長代理、人口部会)、金融庁金融審議会市場WG委員、社会保障制度改革国民会議委員など。
著書に『日本の年金』(岩波書店)、『社会政策』(有斐閣)、『中間層消滅』(角川新書)、編著に『検証・新しいセーフティネット』『社会のしんがり』『みんなの金融』(新泉社)など多数。

田中 聡一郎(タナカ・ソウイチロウ)

関東学院大学経済学部准教授。1979年生まれ。
慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。修士(経済学)。
立教大学経済学部助教を経て、2019年から現職。
近著に菅沼隆、土田武史、岩永理恵、田中聡一郎編著『戦後社会保障の証言-厚生官僚120時間オーラルヒストリー』(有斐閣2018年)がある。

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