ドイツの新右翼

新右翼はナチズムの復活か?

ドイツの新右翼

  • フォルカー・ヴァイス/著
  • 長谷川 晴生/訳
  • 四六判
  • 468頁
  • 2800円+税
  • ISBN 978-4-7877-1827-3
  • 2019.01.23発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

AfD(ドイツのための選択肢)、Pegida、アイデンティティ運動、といったドイツの極右勢力は、日本では、「反移民、反難民、反権威主義などを掲げて湧いて出てきた右翼ポピュリズム」と単純に理解されがちである。しかし、実際には、戦後のドイツ連邦共和国(リベラリズムの優等生)を生き延びてきた思想的遺産の継承者であり、その歴史は戦間期(ヴァイマール共和国時代)にまで遡る。 彼ら右翼は、1968年に先進国で同時多発的に起きた社会運動の手法を手本にして、社会的な立場を確立した。そして、2010年代の難民問題を飛躍のチャンスに変え、一挙に「新右翼」として世に出てきたのである。
また、日本人にはほとんどなじみのない、ドイツ戦間期の「非ナチス」的右翼を源流とした「保守革命」(A・モーラー)について、19世紀からのドイツ極右の歴史を専門とする著者・ヴァイス氏は詳細に解説し、ドイツ右翼の思想的柱である「保守革命」の欺瞞を一つひとつ暴いていく。
本書は、そんなドイツ「新右翼」の系譜を、時事的、思想史的な視点から掘り下げた一冊である。とくに、ドイツの右翼が思想的なよりどころとする、シュペングラーの「夕べの国(西洋)」の概念史、シュミットの「大圏域」の地政学と新ユーラシア主義への言及は、ほかに類書を見ることはなく、ドイツ新右翼のすべてを解説した決定版といえる。

目次

まえがき
第1章 新右翼――その系譜の探索
第2章 アルミン・モーラー――つくられた伝説
第3章 AfDへの道――諸勢力の結集
第4章 右からの挑発――スペクタクルの政治
第5章 保守‐破壊的行動――街頭の精神から
第6章 没落と救済――「秘められたるドイツ」の決起
第7章 夕べの国――ある神話小史
第8章 敵の空間と形態――イスラーム、アメリカ、普遍主義
第9章 新右翼の「核心」――権威主義的ポピュリズム

引用文献

解説 もう一つのドイツ――保守革命から新右翼へ 長谷川晴生
資料

著者紹介

フォルカー・ヴァイス(Volker Weiß)

1972年生まれ。19世紀から現在までのドイツの極右を専門とする歴史家、評論家。ハンブルク大学で歴史学の博士号を取得後、複数の大学での非常勤講師を経て、現在は新聞や雑誌での執筆活動を展開している。単著に『Die autoritäre Revolte: Die Neue Rechte und der Untergang des Abendlandes』(2017年、邦訳『ドイツの新右翼』新泉社)、『Moderne Antimoderne. Arthur Moeller van den Bruck und der Wandel des Konservatismus(近代的反近代――アルトゥール・メラー・ファン・デン・ブルックと保守主義の変容――)』(2012年、未邦訳)などがある。

長谷川 晴生(ハセガワ・ハルオ)

1984年生まれ。エルンスト・ユンガーなどのドイツ文学、思想を専攻。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。東京理科大学および埼玉工業大学非常勤講師。共著に『共感覚から見えるもの』(北村紗衣編、勉誠出版、2016年)、共訳にギュンター・フィガール『問いと答え――ハイデガーについて』(法政大学出版局、2017年)などがある。