傾いた船、降りられない乗客たち
目の眩んだ者たちの国家
- 四六判上製
- 256頁
- 1900円+税
- ISBN 978-4-7877-1809-9
- 2018.05.25発行
- [ 在庫あり ]
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書評・紹介
- 中島京子氏評「2018年の「この3冊」」(「毎日新聞」2018年12月16日)
- 武田砂鉄氏評「今日拾った言葉たち」(「暮しの手帖」2018年8-9月号)
- 武田砂鉄氏評「リレー読書日記」(「週刊現代」2018年6月16日号)
- 武田砂鉄氏評「心を開放する本。」(「ブルータス」2018年10月15日号)
- 武田砂鉄氏推薦「この夏おすすめする一冊 2018」(青山ブックセンター本店)
- 吉川凪氏評「時代を語る文学」(「TRANSIT」No.42,2018.12)
- 金成玟氏評「セウォル号、終わらない問い」(「図書新聞」2018年11月10日、第3374号)
- 佐野正人氏紹介「K文学と北朝鮮の波が押し寄せてきた一年」(「週刊読書人」2018年12月21日、第3270号)
- 舘野晳氏評(「出版ニュース」2018年7月上旬号)
- 「赤旗」2018年5月20日
- 『文藝』2019年秋季号(特集「韓国・フェミニズム・日本」)
- 彩瀬まる氏「巣ごもりしながら読んでたもの」(2020年5月)
- 白井明大氏評(「現代詩手帖」2020年12月号/2021年3月号)
- 藤沢周氏評(「世界」2021年9月号)
- 武田砂鉄氏(TBSラジオ「アシタノカレッジ」2022年4月29日)
- 堀由貴子氏選「『世界』リニューアル記念 これからの世界を考えるための18冊」(2023年12月)
- 倉本さおり氏(TBSラジオ「荻上チキ・Session」2024年4月11日)
- こざわたまこ氏(WEB本の雑誌「作家の読書道」2023年7月28日)
- 前田エマ氏著『アニョハセヨ韓国』(三栄、2024年6月)
- 斎藤真理子氏著『隣の国の人々と出会う——韓国語と日本語のあいだ』(創元社、2024年8月)
紹介文
「どれほど簡単なことなのか。希望がないと言うことは。この世界に対する信頼をなくしてしまったと言うことは。」
――ファン・ジョンウン
国家とは、人間とは、人間の言葉とは何か――。
韓国を代表する気鋭の小説家、詩人、思想家たちが、
セウォル号の惨事で露わになった「社会の傾き」を前に、
内省的に思索を重ね、静かに言葉を紡ぎ出す。
「私たちは、生まれながらに傾いていなければならなかった国民だ。
傾いた船で生涯を過ごしてきた人間にとって、この傾きは安定したものだった。」
――パク・ミンギュ
「みんな本当は知っているのに知らないふりをしていたり、知りたくなくて頑なに知らずにきたことが、セウォルという出来事によって、ぽっかりと口を開けて露わになってしまったのだ」
――ファン・ジョンウン
「私たちが思う存分憐れみを感じられるのは、苦痛を受ける人たちの状況に私たち自身が何の責任もないと思うときだけだ。」
――チン・ウニョン
「「理解」とは、他人の中に入っていってその人の内面に触れ、魂を覗き見ることではなく、その人の外側に立つしかできないことを謙虚に認め、その違いを肌で感じていく過程だったのかもしれない。」
――キム・エラン
「人間の歴史もまた、時間が流れるというだけの理由では進歩しない。
放っておくと人間は悪くなっていき、歴史はより悪く過去を繰り返す。」
――キム・ヨンス
◎中島京子氏評「2018年の「この3冊」」(「毎日新聞」2018年12月16日)
《傾いた船に乗って沈もうとしているのは私たちだと感じている昨今、その苦しみを噛みしめながら書かれた言葉に打たれる。》
装幀:北田雄一郎
目次
傾く春、私たちが見たもの…………キム・エラン
質問…………キム・ヘンスク
さあ、もう一度言ってくれ。テイレシアスよ…………キム・ヨンス
目の眩んだ者たちの国家…………パク・ミンギュ
私たちの憐れみは正午の影のように短く、私たちの羞恥心は真夜中の影のように長い…………チン・ウニョン
かろうじて、人間…………ファン・ジョンウン
誰が答えるのか?…………ぺ・ミョンフン
国家災難時代の民主的想像力…………ファン・ジョンヨン
じゃあ今度は何を歌おうか?…………キム・ホンジュン
永遠の災難状態:セウォル号以降の時間はない…………チョン・ギュチャン
精神分析的行為、その倫理的必然を生き抜かなければならない時間:抵抗の日常化のために…………キム・ソヨン
セウォル号の惨事から何を見て、何を聞くのか…………ホン・チョルギ
本を編んで…………シン・ヒョンチョル(季刊『文学トンネ』編集主幹)
出版社からのコメント
◎「セウォル号以後文学」の原点
2014年4月16日に起きたセウォル号事件。修学旅行の高校生をはじめ、助けられたはずの多くの命が置き去りにされ、失われていく光景は韓国社会に強烈な衝撃を与えました。
私たちの社会は何を間違えてこのような事態を引き起こしたのか。本書は、セウォル号事件で露わになった「社会の傾き」を前に、現代韓国を代表する小説家、詩人、思想家ら12人が思索を重ね、言葉を紡ぎ出した思想・評論エッセイ集です。
本書に寄稿している作家たちの文学作品は、近年、日本でも広く翻訳出版され、多くの読者を獲得するようになりました。それら新世代の作家が深く沈潜した場所から発した研ぎ澄まされた言葉の数々は、揺るぎない普遍性を獲得し、「震災後」の世界を生きる日本の私たちの心の奥深くに届くものであると確信しています。
《本書に収録された文章は、季刊「文学トンネ」2014年夏号と秋号に掲載された後、同年10月に単行本化されて韓国で増刷を重ね、多くの人に読まれてきました。キム・エラン作『外は夏』に代表される韓国の「セウォル号以後文学」の原点といえる本書を通して、韓国の作家たちが喪失と悲しみにどう向き合ったのかを知っていただければと願っています。》
・キム・エラン……『外は夏』(亜紀書房)、『走れ、オヤジ殿』(晶文社)、『どきどき僕の人生』(クオン)ほか
・パク・ミンギュ……『ピンポン』(白水社)、『カステラ』(クレイン)、『亡き王女のためのパヴァーヌ』(クオン)、『三美スーパースターズ 最後のファンクラブ』(晶文社)ほか
・ファン・ジョンウン……『誰でもない』(晶文社)、『野蛮なアリスさん』(河出書房新社)ほか
・キム・ヨンス……『夜は歌う』(新泉社)、『世界の果て、彼女』(クオン)、『ワンダーボーイ』(クオン)ほか