『ギター・ブギー・シャッフル』の書評が「K-POPちょっといい話」に掲載されました
「K-POPちょっといい話」プログの記事「おすすめ韓国文学」(2020-05-17)にて、韓国文学セレクション『ギター・ブギー・シャッフル』(イ・ジン作、岡裕美訳)をご紹介いただきました。
https://ameblo.jp/keitadj/entry-12564851666.html
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韓国の大衆音楽は1960年代に米8軍舞台から生まれたと言っても過言ではない。米8軍舞台は歌手たちに最も安定した生活を保障するだけでなく、トロット(韓国式演歌)一色だった大衆音楽界に新風を巻き込んだ。
本書は1960年代前半のソウルを舞台に龍山(ヨンサン)米軍基地内のクラブステージ「米8軍舞台」で活躍する若きミュージシャンの姿を描いた音楽青春小説だ。朝鮮戦争で孤児となった主人公キムヒョンの楽しみは、米軍向けラジオ局(AFKN: American Forces Korea Network)から流れてくる最新のポップスだった。どん底の生活を続けていたヒョンは偶然の積み重ねで、米軍基地内のクラブにギタリストとして立つことになる姿を描く成長小説でもある。芸能プロダクションは政府傘下の軍納入業者であり、所属する芸能人が米8軍で稼ぐ1年分の所得総額が韓国製造業の輸出総利益をはるかに上回っていた時代。芸能人は米ドルを稼いで国民所得の増大に貢献する輸出産業の一員だった。
米軍内のクラブで演奏するためのオーディションシステム(A〜Dのランク付け)や当時の芸能界に蔓延していた麻薬と暴力についての描写はリアリティがあり興味深い。また、芸能事務所が登場して、実力が優れている歌手が日本やアジア(香港やマニラ)、米国(ラスベガス)へ海外進出をする過程が半世紀が経った現在のK-POP市場構造とかなり類似している。さらに、主人公が新しいバンドを結成した1963年にはコレラが流行り800人以上が亡くなったことや、翌年(1964年)に東京オリンピックを控えていたことは現在の状況と類似している。
タイトル「ギター・ブギー・シャッフル」は主人公キムヒョンがギター練習したザベンチャーズの曲名から。主人公の初恋である歌姫キムキキのモデルは1967年米国からミニスカートで金浦空港に帰国し韓国でミニスカートを流行させた歌手ユンボッキや、1989年に韓国での大ヒット曲「離別(イビョル)」で紅白歌合戦にも出演した歌手パティキムであるようだ。天才ギター少年キッドチェのモデルは後に「韓国ロックの父」と言われるシンジュンヒョンである。
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イジン著「ギター・ブギー・シャッフル」(新泉社)
1960年代の芸能界にも麻薬や暴力が蔓延し、実力歌手が日本やアジア、米国(ラスベガス)へ進出する姿は現在のK-POP界と類似している。さらに、1963年にはコレラ流行で800人以上が亡くなり翌年に東京オリンピックを控えるhttps://t.co/5KqgpwcPOv
— keitadj (@keitadj3) May 17, 2020
ブログ「K-POPちょっといい話」の記事「おすすめ韓国文学」で、イ・ジン『ギター・ブギー・シャッフル』をご紹介いただきました。
〈韓国の大衆音楽は1960年代に米8軍舞台から生まれたと言っても過言ではない。米8軍舞台は……トロット(韓国式演歌)一色だった大衆音楽界に新風を巻き込んだ。〉 https://t.co/52cyj2Mz5D
— 新泉社「韓国文学セレクション」 (@kbook_shinsen) May 18, 2020
イ・ジン『ギター・ブギー・シャッフル』の作中に登場する楽曲や関連する映像を、YouTubeのプレイリストにまとめてあります。読書のお供にぜひどうぞ。https://t.co/aYUgBcrKvv https://t.co/H4EpDavjZs
— 新泉社「韓国文学セレクション」 (@kbook_shinsen) May 22, 2020