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噴火湾沿岸に生きた人びとの、「切り取られた」写真を歴史につなぎ直す
写真が語るアイヌの近代
「見せる」「見られる」のはざま
- 四六判
- 208頁
- 2300円+税
- ISBN 978-4-7877-2409-0
- 2025.03.25発行
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紹介文
明治時代以降、観光みやげとして製作された「アイヌ風俗写真」に写されたもの、そして意図的に写されなかったものに意識を向け、細やかな資料の分析から近代アイヌの実態を描き出す。
目次
プロローグ 写された側の歴史へ
「アイヌ風俗写真」の誕生
再生産され続けるアイヌのイメージと課題
「アイヌ風俗写真」を歴史につなぎ直す
第1章 最古級の写真群――一九世紀後半
最古級の写真
撮影地を絞りこむ
切り取られた風景
最古級の写真群に写るアイヌが生きた時代
日本国民への統合
奪われた先祖伝来の土地
第2章 写されなかった村――「異民族性」による選別と終わりない人種差別
資料の空白
天皇奉迎への参加の「説諭」
動員の対象とならなかった人びと
森村の特殊性
森村の人びとのその後
第3章 切り取られ、再現された「固有の風俗」――一九〇〇年代
ピリカ会発行『アイヌ風俗写真ヱハカキ』
ピリカ会と弁開凧次郎
「固有の風俗」の再現と選別
ゆらぐ「固有の風俗」とその後
第4章 「見せる」と「見られる」のはざま――一九一〇年代の三度の熊送り
熊狩りと熊送り
「陋習」とみなされた熊送り
形式化した熊送りと興行
一九一二年の「熊祭観覧会」
一九一八年の二回の熊送り興行
写されなくなった集落のくらし
和人のまなざし
「保護民」という認識
文化を「見せること」と「見られること」
第5章 押し寄せる旅行者と観光地化をめぐる葛藤――一九二〇~四〇年代
長万部につくられた展示施設「ヱカシケンル」
「アイヌ部落」を目指す和人旅行者と観光業の萌芽
アイヌ社会に生じた亀裂
展示施設の建設をめぐるさまざまな思惑
「ヱカシケンル」の建設
たび重なる施設の損壊とその後
戦時下の「アイヌ見物」
エピローグ 終わることのない「アイヌ史」
「滅び」を宣告される中を生きる
伝統文化の断絶
日本人として、アイヌとして
再び、アイヌとして
「民族共生」の実像
「民族共生の社会」の実現のために