ヴェールを脱いだインド武術〔増補改訂版〕
近刊

カラリパヤットの源流を求めて

ヴェールを脱いだインド武術〔増補改訂版〕

甦る根本経典『ダヌルヴェーダ』

  • 伊藤 武/著
  • A5判
  • 316頁
  • 3000円+税
  • ISBN 978-4-7877-2324-6
  • 2024.09.06発行

紹介文

すべての学問・技芸がそうであるように、インドでは武術もまた神々に属している──。

インド各地への広いフィールドワークと、『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』といった叙事詩から「ヴェーダ」文献までを博捜し、神話、歴史、技術、思想、蘇生術、アーユルヴェーダなど、伝統の武術カラリパヤットが内包する豊穣な体系を解き明かす名著、待望の増補改訂。補編として幻のチベット武術「獅子吼金剛拳──チベット密教の武術」の一編を附す完全版。図版多数。

目次

口上──インド武術の『虎の巻』と呪いのこと

第一篇 カラリの武術

1 武術の始まり
ヴィーラバドラ
マーラ
ガネーシャ
パラシュラーマ

2 ヴェーダの武術
カラリパヤットの始まり
バラモンのケーララ伝来
インド武術の根本経典
金剛拳(ヴァジュラムシュティ)

3 むき出しの子宮
〝カラリ〟の語源
〝カラリ〟システムの完成
インド風水
大地の〈風〉

4 野獣になる──体術
レッツ・カラリ
セルフ・アビヤンガと準備運動
脚の稽古
動物のポーズ
ヨガ武術?

5 人になる──武器術
大量破壊兵器はあったか?
武器の種類
木製武器術(コールターリ)
金属武器術(アンカターリ)
武器をスーパー武器に易る
オッタパヤット──カラリの太極拳

6 勇者になる──拳法術
カラリパヤットの拳法
拳は武器の延長
自然の武器

第二篇 カラリの身体

7 断末魔の悲鳴
「末魔(マルマン)」の定義
マルマンの位置
「断末魔」したら
蘇生術(マルカイ)
達磨は来たか?

8 末魔と経穴
『スシュルタ』のゆくえ
経穴(ツボ)との比較
〈氣〉またはプラーナ
臍──脈管の根
アムリタ・ニーラ──日周期
寝ぼけたマルマンをたたき起こす方法

9 末魔と密教
ダヌルヴェーダ瞑想の基本
マルマンからチャクラへ
真言の秘儀(マントラ・タントラム)

第三篇 カラリの医術

10 タントラの医学
マルマ療法のこんにち
鍼灸はある?
マルマ療法の原点
マルマ療法の根本原理

11 アビヤンガとシローダーラ
カラリの衰退とマルマ療法の伝播
マルマ・アビヤンガ
シローダーラ

12 ウリチル究極のマッサージ
季節に合わせた稽古とマッサージ
ウリチル・フルコース
ウトサーダナ
ヨーガの宝の動き

補論 獅子吼金剛拳(シンハナーダ・ヴァジュラムシュティ)──チベット密教の武術

アダト伝説
ドプドプ(僧兵)
不殺生戒
死のヨーガ
武者修行の旅
喇嘛拳

あとがき
参考文献
カラリパヤット関連年表
カラリパヤットの体系と術語

出版社からのコメント

カラリパヤットの歴史、技術、思想、蘇生術、そしてそこに含まれるアーユルヴェーダの全てを公開。武術愛好家、ヨーガ愛好家、アーユルヴェーダ愛好家の座右の書となる名著、待望の増補改訂!

カラリパヤットとは、インド西南部のケーララを発祥とする武術。数種類のエクササイズに始まり、ヴァディブと呼ばれる「ゾウ、ネコ、ライオン、ウマ、ヘビ、クジャク」などの動物のポーズを含む一連の動作、そして武器術の体系があります。さらにケーララはインドの伝統医学であるアーユルヴェーダ発祥の地といわれており、カラリパヤットにもアーユルヴェーダ伝来の固有のマッサージ体系が含まれ、総合的に身体をあつかうものとなっています。

著者の伊藤武は1970年代後半の20代の頃から、インドをはじめとするアジア各地を放浪し、そのなかで各地の身体技法にふれ、それを文章と絵に残しました。その時に偶然写本することを許された貴重な古代のテキスト(貝葉写本)や「ダヌルヴェーダ」(「弓の科学」と呼ばれる身体の訓練について書かれた古代の文献)の翻訳、さらには実地で触れた経験から、日本で初となる総合的にカラリパヤットを紹介する本を執筆します。本書はその増補改訂版。増補として幻のチベット武術「獅子吼金剛拳」についての一編を附す完全版です。

インド武術やアーユルヴェーダに関心のある方だけではなく、インドの古典舞踊、さらには「バーフバリ」シリーズや「RRR」、「ガネーシャ マスター・オブ・ジャングル」といったスペクタルアクションインド映画好きにも手にとっていただければ嬉しいです。

それではインドの文章に倣い障害の除去者ガネーシャ神に祈りを。
──シュリー・ガネーシャーヤ・ナマハ!

著者紹介

伊藤 武(イトウ・タケシ)

1957年、石川県出身。作家、イラストレーター。
サンスクリット語とヨーガの講師、古式ムエタイをはじめとした東南アジア伝統武術の研究を行う。1979年、最初のインド旅行に出発。約2年間にわたってインド全土、ネパール、スリランカ、タイを放浪する。以後もこれらの地域を繰り返し訪問し、遺跡調査、神話・伝説、風習、武術、食文化等の収集に努める。インド研究家として周辺地域の歴史や文化にも造詣が深い。全国でオリジナルテキストを用いたサンスクリット語講座等を開催。サンスクリット語の原文から翻訳されたヨーガスートラは難しい用語を使わずに説明され人気を博している。また、自身によるイラストは難解なインド哲学を理解する手助けになると定評がある。
著書に『図説ヨーガ大全』(佼成出版社)、『スパイスの冒険』『秘伝マルマ ツボ刺激ヨーガ』『全アジアを喰らう』『身体にやさしいインド』『図説インド神秘事典』(以上、講談社)、『古式ムエタイ見聞録』『ヴェールを脱いだインド武術〔増補改訂版〕』(以上、新泉社)、『図説ヨーガ・スートラ』『チャラカの食卓 二千年前のインド料理』〔共著〕(以上、出帆新社)、など多数。

関連書籍

  • 古式ムエタイ見聞録