沈黙を破るフェミニズム詩集
真っ赤な口紅をぬって
- A5判変型
- 128頁
- 1800円+税
- ISBN 978-4-7877-2125-9
- 2022.03.15発行
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書評・紹介
紹介文
◎大塚真祐子さん評(「毎日新聞」2022.4.27)
《率直で簡潔な言葉群は、映画監督による性暴力の告発がなされてから、相次いで性加害の撲滅を訴える声明が出されているこの国の現状と響き合う》
◎「信濃毎日新聞」2022.4.25
《女性に対する暴力と支配…それに対する沈黙や無関心の壁を破るため、著者は彼女たちの声を聞くのが「一番大切」で、それが未来をひらく始まりと信じる》
◎武田砂鉄さん評(TBSラジオ「アシタノカレッジ」2022.4.15)
《私たちが勝手にもみ消してきたかもしれない声がこの詩から聞こえてくる》《詩というかたちだからこそ伝わってくる痛切さというものがある》
◎石原燃さん(劇作家・小説家)評(Facebook/Instagram 2022.3.12)
《差別を受けるというのは、言葉を奪われていくということなのだと思う。嫌だ、やめて、という言葉を奪われ、悲しみや怒りを表現する言葉を奪われ、助けを求めたり、告発したりする言葉を奪われる。沈黙を破るということは、その奪われた言葉を取り戻す作業なんだな、と思う》
悪いのは私 最初の男だった
悪いのは私 選択を間違えた
悪いのは私 18歳だった
悪いのは私 子供だった
悪いのは私 我慢した
悪いのは私 やらせておいた
……
悪いのは私 あとになってわかった
罪悪感 そのいくつもの顔
ぜんぶが 私のほうを向いていた
——「悪いのは私」より
ひと言話すたびに、彼女たちは立ち直っていった。彼女たちの勇気、生きる喜び、力、それらに導かれて書いた。
——「まえがき」より
「沈黙を破りたいという私たち共通の願い」。フランスの詩人・小説家である著者がDV(ドメスティック・バイオレンス)や性暴力の女性被害者たちに聞き取りをおこない、その経験をもとに執筆したフェミニズム詩集。
「息を潜める、小さな物音に怯えるように生きる女性たち。肩を強ばらせ、こんなはずじゃなかったと自分を責め、眠れない夜を過ごし、この生活から逃げられる瞬間を見極めようと神経を研ぎ澄ます女性たち。ページを一枚一枚めくりながら、今もその渦中を生きている女性たちの息づかいが聞こえてくるようだ。」(解説:北原みのり)
「詩という形式で表現されてはいるが、⽇常的な⾔葉による⼥性の語りを再現しているため、難解さはなく、むしろ感情に直接訴えかける、共感を呼びやすい作品になっている。被害者がおそらく何度も自問し、考えてきた⾔葉や思いが作家の⼿で表現されており、どの詩も⼒強く、説得⼒がある。」(訳者解説:相川千尋)
目次
まえがき─滞在記より 2017年12月4日―2018年1月26日
Ⅰ 生きのびた女たち
いろんな理由をつけられて
どこかに行けば うまくいく
すさまじい暴力、すさまじい沈黙
地獄
ウェディングドレス
女らしさ
おそるおそる
あとどのくらいの時間
謝罪のあとで
悪いのは私
青あざ
いくつもの危険
動詞「黙る」の活用
いくつもの禁止事項
涙
こっそり隠れて
ベッドは
罵倒語
尋問
たくさんの質問
どんな扉も
私の家
目立たないように
「自分の部屋に行っていろ」
ジェットコースター
苦悩
出ていく
まぬけ
急いで
名前を呼ぶ
判決の日
男女平等
戦争
インシャラー
わが国の重要課題
ほんの少しでも
のぞき穴
子供たち
黒パン/白パン(シルヴィーに)
安全な場所
ひとりの新しい女性
唯一の決まり
びくびくして
私の楽園
本
勝利
刺繡
夢
逃げた女
どうかしている
売女みたいな口紅
Ⅱ 彼女たちを讃える
霊柩車
私の体
沈黙
覚えておいて
私たちはあなたを讃える
儀式
自分の声が聞かれる場所 北原みのり
訳者解説 相川千尋
出版社からのコメント
DV(ドメスティック・バイオレンス)や性暴力の被害、女性を狙った犯罪は日本を含む各国で増加しており、全世界で女性が被害者になる殺人事件の多くが家庭内で起きていると言われます。本書はDVと性暴力の女性被害者の声を聞き書きした詩集です。親友に打ち明けるようなことばのひとつひとつに、苦しみを生きのびた女性たちの大切なメッセージが込められています。
解説で、北原みのりさんは性暴力根絶を目指すフラワーデモの経験を踏まえ、「自分の声が聞かれる場所」の大切さを語っています。本書を読み、声を聞くことが、女性に対する差別や暴力の問題について考えるきっかけになることを願っています。