賢く貯めて、うまく使って、社会に循環させるお金の話
みんなの金融
良い人生と善い社会のための金融論
- 四六判
- 440頁
- 2800円+税
- ISBN 978-4-7877-2107-5
- 2021.06.06発行
- [ 在庫あり ]
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紹介文
本書は、毎年400人近い受講者を集める慶應義塾大学経済学部の寄附講座「長寿と金融」の講義録をもとにまとめられた金融の入門書です。学生からビジネスマン、高齢者、金融の本を読むのは初めてという人まで、幅広い方々を読者として想定しています。
金融というと「お金持ちの話」と考えてしまう日本人が多いですが、この本では、普通の人が知っておきたいこと、知っておけば損しないこと、知っておかなければいけないこと、などをわかりやすく紹介しました。
ただ貯金するだけでなく、いかに殖やして、育てていくか。そして上手に取り崩していくか。これは、超高齢社会を迎えた私たち日本人が避けて通れないテーマです。「年金2000万円問題」がマスコミを騒がしたことは記憶に新しいですが、あの報道に対しては、「それじゃ足らないでしょ」という人から、「そんな大金をどうやって貯めたらいいのか」と憤る人まで、さまざまな受け止め方がありました。格差社会が広がるなか、非正規雇用、低年収の人たちのことを全く考えていないレポートだったことは大問題ですが、それにもまして日本人の金融に対しての拒否反応が際立った出来事でした。
一つ確かなことは、「お金の話はちょっと・・・」と苦手意識を持ち続けていたら、これからは良い人生を送ることは難しいだろうということです。だからこそ、今必要なのは、お金持ちのための金融論ではなく、「みんなのための金融論」なのです。
本書は、金融の知識を開くきっかけになる、そんな本です。
目次
みんなの金融 良い人生と善い社会のための金融論
序文 慶應義塾大学経済学部教授 駒村康平
第1部 良い人生を送るための金融 (要旨 駒村康平)
第1章 良い人生を送るための金融論:人生と金融
―生涯にわたる資産形成の重要性―
慶應義塾大学経済学部教授、ファイナンシャル・ジェントロジー研究センター長 駒村康平、三菱UFJ信託銀行 執行役員、フロンティア戦略企画部長 石崎浩二
第2章 日本の中高齢者の金融リテラシー
―日米比較を中心として―
慶應義塾大学経済学部教授 山田浩之
第3章 長寿社会における認知機能低下と金融ジェロントロジー
慶應義塾大学経済学部教授、ファイナンシャル・ジェントロジー研究センター長 駒村康平
第4章 豊かな人生のためのお金の管理
―フィンテックが広げる可能性―
株式会社マネーフォワード 執行役員CoPA 瀧 俊雄
第5章 資産形成と資産活用
―超高齢社会の金融サービス―
合同会社フィンウェル研究所代表 野尻哲史
第6章 人生100年時代の資産の管理・承継
―信託を活用する―
東京大学名誉教授 能見善久
第2部 善い社会のための金融 (要旨 駒村康平)
第7章 社会の持続可能な発展に貢献する金融
慶應義塾大学経済学部教授、ファイナンシャル・ジェントロジー研究センター長 駒村康平、三菱UFJ信託銀行 執行役員、フロンティア戦略企画部長 石崎浩二
第8章 フィンテックが変える未来の金融
日本総合研究所理事長 翁百合
第9章 シルバー民主主義と社会保障・消費税
日本経済新聞社 上級論説委員兼編集委員 大林 尚
第10章 人生100年時代の働き方:生涯現役社会への道
―2040年問題に備える―
日本私立学校振興・共済事業団理事長 清家 篤
おわりに 駒村康平
用字用語集
参考文献
出版社からのコメント
慶應義塾大学経済学部の寄附講座の講義録第2弾は「金融論」です。駒村康平教授が取り組む「金融ジェロントロジー(金融老年学)」を学ぶ講座「長寿と金融」の中から、8人の論者の講義を取り上げました。フィンテック、信託、資産活用と多岐にわたる内容です。
カバーイラストは、講義録第1弾の『社会のしんがり』につづいて坂崎千春さんにお願いしました。今回のリスは、シートン動物記の「ヒッコリーの森を育てるリスの物語 バナーテイル」をモチーフにしています。
冬に備えて、リスはせっせとドングリを集めて食べます。ところがすべてを食べるわけではなく、必ず一部を土に埋めるといいます。その実から芽が出て、成長し、やがて木になって、次世代のリスに豊かな生活をもたらすのです。
このリスの習性こそが、まさに本書で取り上げた「投資」です。自分のための投資ではなく、社会のために投資をするというSDGs的な考え方が、これからの金融論では必要になります。
利殖の印象が強い「金融論」ですが、社会のため、みんなのための「金融論」もあります。本書は、金融の本は読んだことがない、という人にこそ読んでいただきたい一冊です。