台湾文学翻訳家・天野健太郎の俳句とエッセイ
風景と自由
天野健太郎句文集
- 四六判上製
- 224頁
- 2000円+税
- ISBN 978-4-7877-2019-1
- 2020.10.14発行
- [ 在庫あり ]
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書評・紹介
紹介文
ボクシンググローブを干せ五月晴れ
記憶には蛙を踏んだ匂いとか
台湾の蜜柑を食べる種やさし
冬の雨ツァイ・ミンリャンが降らすよに
驟雨打つカフェの女が目を覚ます
俳句がいいところは、読み返すと(出来不出来はともかくとして)そのときの風景がすうっと思い浮かぶことだ。それは現実よりもずっとリアルで、写真より抽象的で、前後の時間が断片的に重なりあうような記憶の総合体だ。
——天野健太郎
人間には風景に惹かれる自由がある。なぜ惹かれたのかわからないこともある。わからないままにそこに立って、風景を見ている自由。わかるまで人と会いつづける自由。わからないかもしれないけれど、言葉を追い続ける自由。
——斎藤真理子
2018年に亡くなった台湾文学翻訳家・天野健太郎。陳浩基『13・67』、龍應台『台湾海峡一九四九』など中国語文学の話題作を日本に紹介し、多くの読者がその訳文を賞賛した。著者が死の直前まで詠み続けた俳句と、台湾エッセイを集成。韓国文学の翻訳者・斎藤真理子の解説を付す。
目次
はじめに
句集 風景と自由
いつも心に自画自賛
季節たち(二〇〇九〜二〇一二)
初夏から
秋にはもひとつ
うちは冬寒い
春は花より芽が出るのが嬉しくて
空と女と音楽と
もっと匂いをもっと動きを
桜から
東京に雪が降る
そういえば花屋の息子だった
自分以外も動いている
梨にはまった
帰る場所がふたつあり
台湾には鳥がいる
三河には川がある
拾遺 俳句にならなかった風景
俳句にならなかった風景
二〇一八年
散文 台湾を思い出す方法
外国人のいる風景1 餃子
外国人のいる風景2 上様
あいまいな国境の歴史(抄)
台湾を思い出す方法
杉田久女と台湾
解説 風景の前の自由 斎藤真理子
著者紹介