農と食と地域をデザインする

デザインで何が変わったか、12人の生産者のインタビューを収録。

農と食と地域をデザインする

――旗を立てる生産者たちの声

  • 長岡 淳一/著
  • 阿部 岳/著
  • 四六判
  • 224頁
  • 2200円+税
  • ISBN 978-4-7877-1923-2
  • 2019.12.15発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

「デザインによって農業や一次産業や地方のイメージを新しいものに変えようと取り組んでいることには、すごく意義があると思いますよ。
まちづくりとか地域づくりと言うと、経済をどうするのか、どうすれば儲けられるのかということばかり考えがちじゃないですか。……経済は目的ではなくて手段、それよりも僕らの暮らし、ライフスタイルの行方を見定めることのほうが大事です。あきらめずに続けていけば、やがて世の中もそういう方向へ向かっていくと信じています。」
——伊東豊雄(本書より)

デザインで何が変わったか、12人の生産者のインタビューを収録。
一次産業とデザインのコラボレーションによってローカルのブランド価値を高める。「農業デザイン」「地域デザイン」で注目を集めるクリエイティブディレクターとアートディレクターの著者が北海道から沖縄まで生産現場を訪ね、ブランディングの実例を紹介する。建築家・伊東豊雄、石坂産業・石坂典子の特別インタビューも収録。

 

◎共同通信社配信の紹介記事が以下の新聞に掲載
《ブランド化に挑んだ農家などに行ったインタビューをまとめた一冊だ…秀逸なアイデアに驚くだけでなく、手塩にかけた産品への愛を感じる》

2019.12.29 京都新聞
2020.1.12 福井新聞
2020.1.13 日本海新聞、大阪日日新聞
2020.1.19 神奈川新聞、岩手日報など

そのほか十勝毎日新聞、南日本新聞、毎日新聞北海道版でも紹介記事が掲載されています。

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目次

はじめに

1 尾藤光一 尾藤農産(北海道・芽室町)
次の世代のために農家の所得を上げたい、労働環境を改善したい
お客さんがどのような目で商品を見ているのかを学ぶ
生産者が好奇心を持って農業を研究し続けること

2 本山忠寛 本山農場(北海道・美瑛町)
「おじいさんの形見の金槌」からはじまったブランディング
消費者から評価されることで農産物が輝いて見えるように
「産地直送」による販売の難しさと可能性
農家の女性たちが生き生きと仕事をするために

3 嶋木正一 ハッピネスデーリィ/嶋木牧場(北海道・池田町)
先進的な酪農ブランディングの原風景はアメリカの牧場
信頼関係があるからこそ納得のいく統一感あるデザインに
さまざまな専門家と組むことで生まれた経営効果
北海道・十勝以外の生産者のためにも力になりたい

4 東原弘哲 東原ファーム(北海道・芽室町)
飼育環境にこだわり、ホルスタイン牛で和牛のおいしさを実現したい
ロゴマークによって売り出し方の方向性が統一され、販路の開拓へ
「十勝ココナッツ牛」のブランドを縦に横に展開したい

5 池下藤一郎 池下産業(北海道・広尾町)
「大トロいわし」のプレミアム冷凍ブランドを立ち上げるまで
水産加工業で地域社会を変え、世の中を変える
漁業の「ストーリー」によって生産者と消費者の一体感を

6 伊藤隆徳 フルーツのいとう園(福島県・福島市)
東日本大震災後、起死回生の策としてはじめた商品開発
「国産大粒高級枝付き干しぶどう」をソムリエスタイルで販売
福島の安心・安全、おいしい食品を海外の人にも食べてもらいたい

7 森清和 森農園(群馬県・倉渕町)
ケープグーズベリー――新規就農者だからこそほかの農家がやらない作物を
ロゴマークをつくることで農園への責任感が芽生えた
消費者と畑の距離を近づける体験を提供したい

8 木内博一 和郷(千葉県・香取市)
この30年で農業のイメージが変わってきた
マーケットのニーズに応える「食材製造業」への転換
「あるべき姿」というヴィジョンを持つ――ブランディングの意義

9 真覚精一 伊豆市産業振興協議会(静岡県・伊豆市)
「水」に対する地元の誇りをブランドコンセプトに
完成した商品をどうやって展開し、販売していくかという課題
重要なのは地域の生産者・事業者の意識が統一されること

10 福池信次 T's table(徳島県・鳴門市)
デザインを用いた情報発信や売り方のスタイルが定まっていなかった
地方の特産品に洗練された高級感を求める層に向けて
OEMによる徳島発の地域ブランディング・プロジェクト

11 堀口大輔 TEAET /和香園(鹿児島県・志布志市)
日本人のお茶離れに対する危機感から新商品のブランディングへ
従来の和風の世界観から離れるためにデザインで差別化を
今後は社内外のコミュニケーションを深めることが重要に

12 小田哲也 みやぎ農園(沖縄県・南城市)
ばらばらだった商品群のデザインやコピーを統一のイメージにしたい
社内で意見を出しあう中で農園の方針を整理する機会に
持続可能で循環型の農業へ――人づくり、産地づくりの一環としてのブータンの農業支援

特別インタビュー1 伊東豊雄(建築家)
東日本大震災後、地方にある人の暮らしを見つめるように
建築の仕事と地域のまちづくり、農業との関わり
自然とつながり、経済がすべてではないという考え方が社会を変える

特別インタビュー2 石坂典子(石坂産業)
廃棄物を扱う会社がオーガニック農園をはじめた理由
「環境教育」というテーマを掲げて農業生産をおこなう
ブランディングを通じて「地域」への意識が変わる
社会の根本的なところを正す「ファームビジネス」とは

あとがき

出版社からのコメント

Q.なぜ農業にデザインが必要なのか?
A.デザインには、農家や生産者のモチベーションをあげ、前向きな気持ちを呼び起こして勇気を与える力があるから。

「六次産業化を目指して加工品をつくりたいがパッケージデザインをどうしたらいいかわからない」。本書には、そんな悩みを抱える一次産業や地域づくりの関係者の参考になるよう、「農業デザイン」「地域デザイン」に実際に取り組み、ブランド化の成果をあげる生産者・事業者の「生」の声を収録しています。
デザイン・ブランディングカンパニー、ファームステッドの共同代表を務めるふたりの著者が聞き手となってインタビュー取材を実施。「なぜ農と食と地域にデザインが必要なのか」というテーマについて、全国各地の大規模農家、小規模農家、畜産家、農水産加工の事業者、地域活性化の関係者など12名が詳しく語っています。
事業継承、商品開発、販路開拓、経営再建、発信力強化…。どのような課題があり、それをデザインによってどう解決したのか。そして、事業にどんな効果や変化が生まれたのか。日本の農業再生・地方再生のヒントがここにあります。

著者紹介

長岡 淳一(ナガオカ・ジュンイチ)

クリエイティブディレクター、株式会社ファームステッド代表取締役。1976 年、北海道帯広市生まれ。専修大学経済学部経済学科卒。大学卒業までスピードスケートの選手として活躍し、世界各国を遠征。現役引退後、地元へU ターン。2002年、帯広市で有限会社フレーバーを設立し、新世代の農業ウェアを提案するプロジェクトなどを推進する。2013 年、阿部岳とともに株式会社ファームステッドを設立。グッドデザイン賞受賞ほか受賞歴多数。共著に『農業をデザインで変える』(瀬戸内人)。

阿部 岳(アベ・ガク)

アートディレクター、株式会社ファームステッド代表取締役。1965 年、北海道帯広市生まれ。武蔵野美術短期大学グラフィックデザイン学科卒。東京都内のデザイン事務所勤務の後、1996 年に有限会社ガクデザインを設立。企業のCI 計画、商品ブランドの構築やパッケージデザインなどを中心に活動する。2013 年、長岡淳一とともに株式会社ファームステッドを設立。グッドデザイン賞受賞ほか受賞歴多数。共著に『農業をデザインで変える』(瀬戸内人)。

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