まなざしが出会う場所へ

フォトジャーナリストの自伝的ルポルタージュ。

まなざしが出会う場所へ

越境する写真家として生きる

  • 渋谷 敦志/著
  • 四六判
  • 344頁
  • 2000円+税
  • ISBN 978-4-7877-1901-0
  • 2019.01.31発行
  • [ 在庫あり ]

書評・紹介

紹介文

◎サンキュー・タツオさん書評(「朝⽇新聞」2019.3.2)
《著者が「自分」を語るから等身大の問題として届く。彼が見たもの感じたことは地続きの問題として、読者と著者のボーダーさえも崩していく》

◎日野剛広さん書評(「WEB本の雑誌」2019.6.6)
《わからないという事実、わかりあえないことこそ出発点だと語る。それは世界で目撃してきた多くの悲劇と人々との葛藤、そして見つめ返してきた”まなざし”の奥に透けて見える人々の人生に思いを馳せることを、常に怠らなかったからこそ獲得できた視座ではないかと思う》

「その眼に射抜かれることもある。その眼に挫折することもある。それでもなお、お前は何者なんだ、と厳しく問いつめる眼に自分を開いておくこと。 見つめ、見つめられ、まなざしが交差する十字路が、ぼくのカメラのレンズに映っている。
そこに近づけるだろうか。
そのためには、どうしても置き去りにできないあの眼が問うものについて考え続けるしかない。自分が感じたあのおののきの意味を幾度も反芻すること。ボーダーランドをゆく旅で出会った忘れられない人びとの面影と、写真家にしかできない魂の対話を続けながら。」
——本書より

どうして見つめ返すのか。困難を生きる人びとの眼を——。アフリカ、アジア、東日本大震災後の福島へ。フォトジャーナリストが自らに問うルポルタージュ。
国境なき医師団との関わりから写真家として歩みはじめた著者は、世界各地の紛争や飢餓や児童労働、災害の現場を取材し、人びとが人権を奪われ、生きづらさを強いられる現代社会の「問題」を発見する。それは同時に、一人ひとり固有の名前とまなざしをもつ「人間」に出会う経験でもあった。
困難を生きる人びととわかりあえないことに苦悩しつつ、「共にいられる世界」を切実に求めて旅する著者の声は、分断の時代に私たちはどう生きるのかという道を指し示す。

目次

序章 国境を越えること、写真を撮ること
第1章 シャッター以前、旅のはじまり
第2章 アフリカ、国境なき医師団と共に
第3章 子どもたち一人ひとりのカンボジア
第4章 タイ・ミャンマー国境線上で考える
第5章 ボーダーランドをめぐる旅のノート
第6章 共にいられる世界を見つめて--福島にて
あとがき

著者紹介

渋谷 敦志(シブヤ・アツシ)

1975年、大阪府生まれ。写真家、フォトジャーナリスト。立命館大学産業社会学部、英国London College of Printing卒。大学を休学して1年間ブラジルの法律事務所で研修し、ブラジルを旅する。卒業後、ホームレス問題を取材したルポで国境なき医師団日本主催1999年MSFフォトジャーナリスト賞を受賞。それをきっかけにアフリカ、アジアへの取材を始める。日本写真家協会展金賞、視点賞など受賞。テーマは「境界を生きる者たちを記録し、分断を超える想像力を鍛えること」。著書に、写真絵本『希望のダンス——エイズで親をなくしたウガンダの子どもたち』(学研教育出版)、写真集『回帰するブラジル』(瀬戸内人)。共著に『ファインダー越しの 3.11』(原書房)、『みんなたいせつ——世界人権宣言の絵本』(岩崎書店)がある。

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