誰のための熱帯林保全か

「責任ある生産と消費」の裏側で起こっていること

誰のための熱帯林保全か

現場から考えるこれからの「熱帯林ガバナンス」

  • 笹岡 正俊/編
  • 藤原 敬大/編
  • 四六判上製
  • 280頁
  • 2500円+税
  • ISBN 978-4-7877-2103-7
  • 2021.03.15発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

《「責任ある生産と消費」の裏側で起こっていること——。》

私たちの日用品であるトイレットペーパーやパーム油。
環境や持続可能性への配慮を謳った製品が流通するなかで、原産地インドネシアでは何が起こっているのか。
熱帯林開発の現場に生きる人びとが直面しているさまざまな問題を見つめ、「熱帯林ガバナンス」のあるべき姿を考える。

インドネシアをはじめとする熱帯諸国の森林開発は、天然林破壊や住民との土地紛争などさまざまな環境・社会問題を引き起こしてきた。しかし、近年になってNGOや市民社会の圧力を背景に、国際的な資源管理認証制度の改善や企業の自主行動計画の策定など、環境と地域社会への配慮や持続可能性を謳った「熱帯林ガバナンス」の仕組みの整備が進んでいる。
しかし、森林開発の現場を少しでも歩くと、理念と現実との間には大きな隔たりがあることに気づく。さらに、ガバナンスの制度的外観の整備が進むことで、現場のリアリティは逆に見えにくくなっている。本書の目的は、草の根の人びとの視点から熱帯林「開発」と「保全」の現場の実情を明らかにし、これからの「熱帯林ガバナンス」のあるべき姿を検討することにある。

目次

序章 現場から考える「熱帯林ガバナンス」のあり方:周縁化された「草の根のアクター」の視点から…………笹岡正俊

I 誰のための「熱帯林ガバナンス」か
第一章 力を持つアクターたちがつくり出す「現実」とかき消される声:APP社「森林保護方針」に基づく自主規制型ガバナンスの事例…………笹岡正俊
第二章 持続可能な森林経営をめぐるポリティクス:複雑化する現代社会で「人と人の信頼」は再構築できるか…………藤原敬大
コラムA 「森林保護方針」の裏側:AP通信の記事より…………中司喬之
コラムB スマトラ島の森林消失「問題」のフレーミングを問う…………笹岡正俊

II 認証制度が現場にもたらしたもの
第三章 パーム油認証ラベルの裏側:文脈なき「正しさ」が現場にもたらす悪い化学反応…………寺内大左
第四章 大規模アブラヤシ農園のRSPO認証取得と取り残された労働者たち…………中司喬之
コラムC 「認証制度」が再現する植民地の統治形態…………藤原敬大

III 「住民の同意」とは何か
第五章 インドネシア最大手の製紙会社による「紛争解決」と「住民の同意」…………相楽美穂
第六章 「住民との同意」は本来の目的を果たせるのか…………浦野真理子
コラムD 環境・社会リスクの高い熱帯木材の利用をなくすために…………三柴淳一

IV 土地支配の強化のなかで:生きる営みが「違法」とされていく人びと
第七章 人びとはなぜ「不法占拠者」になったのか:強制排除された人びとの生活再建に対する社会的責任…………笹岡正俊
第八章 カンパール半島における土地支配の強化と再生産される「違法伐採」…………原田 公

著者紹介

笹岡 正俊(ササオカ・マサトシ)

東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程単位取得退学。博士(農学)。
北海道大学大学院文学研究院准教授。
専門は環境社会学、ポリティカルエコロジー。

藤原 敬大(フジワラ・タカヒロ)

九州大学大学院生物資源環境科学府森林資源科学専攻博士後期課程修了。博士(農学)。
九州大学大学院農学研究院准教授。
専門は森林政策学、林業経済学、ポリティカル・フォレスト論。

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