ぼくは幽霊作家です
近刊

語りえない声、人の生を見つめた九つの短篇集。

韓国文学セレクション

ぼくは幽霊作家です

  • キム・ヨンス/著
  • 橋本 智保/訳
  • 四六判上製
  • 272頁
  • 2200円+税
  • ISBN 978-4-7877-2024-5
  • 2020.10.08発行
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紹介文

ことばでは言えない生のために——。

「世の中の出来事は過ぎ去ってしまうと口を閉じる。
過去とは、犯人が現場に自分に有利な証拠だけを残して逃走してしまうのと似ている。」

現代韓国を代表する作家キム・ヨンスが、自らを物語ることばを持てなかった者たちの語りえない声に耳を澄まして書き上げた短篇集。

九本の短篇からなる本作には、王朝末期の朝鮮に赴くアメリカ人、伊藤博文を暗殺した安重根、一九三〇年代の京城(ソウル)、朝鮮戦争に従軍した中国人民志願軍兵士、そして現代のソウルに生きる男女などがモチーフとして登場する。
時代と空間はめまぐるしく変遷するが、作家はあくまで個人の内面に焦点を当て、「幽霊作家(ゴーストライター)」として一人称の語りに徹して物語る。
キム・ヨンスの作品は、歴史に埋もれている人間を描くことで歴史に挑もうとする。つまり、小説によって画一的な〈歴史〉を解体し、〈史実〉を再構築しようとする野心に満ち、歴史書と小説のどちらがより真実に近づけるのかを洞察する壮大な実験の場としてある。

装画:イシサカゴロウ 装幀:北田雄一郎

目次

簡単には終わらないであろう、冗談
あれは鳥だったのかな、ネズミ
不能説(ブーヌンシュオ)
偽りの心の歴史
さらにもうひと月、雪山を越えたら
南原古詞に関する三つの物語と、ひとつの注釈
伊藤博文を、撃てない
恋愛であることに気づくなり
こうして真昼の中に立っている

解説 ことばでは言えない生のために……金炳翼(キム・ビョンイク)
作家のことば
訳者あとがき

著者紹介

キム・ヨンス(金衍洙/김연수/KIM Yeon-su)

一九七〇年、慶尚北道金泉生まれ。成均館大学英文科卒業。
一九九三年、詩人としてデビュー。翌年、長編小説『仮面を指差して歩く』を発表し、本格的に創作活動を始める。『七番国道』『二十歳』『グッバイ、李箱』『僕がまだ子どもだった頃』『愛だなんて、ソニョン』『ぼくは幽霊作家です』『君が誰であれ、どんなに寂しくても』『波が海のことなら』などの話題作を次々と発表する。
文学、思想、歴史、社会科学など、広範な読書体験に裏打ちされた文体で多くの読者を魅了し、韓国現代文学の第一人者と評されている。
『ぼくは幽霊作家です』で大山文学賞、ほかに、東仁文学賞、黄順元文学賞、李箱文学賞など数多くの文学賞を受賞。エッセイスト、翻訳者としても活動している。
邦訳書に、『夜は歌う』(新泉社)、『ぼくは幽霊作家です』(新泉社)、『世界の果て、彼女』(クオン)、『ワンダーボーイ』(クオン)、『皆に幸せな新年・ケイケイの名を呼んでみた』(トランスビュー)、『目の眩んだ者たちの国家』(共著、新泉社)。

橋本 智保(ハシモト・チホ)

一九七二年生まれ。東京外国語大学朝鮮語科を経て、ソウル大学国語国文学科修士課程修了。
訳書に、キム・ヨンス『夜は歌う』『ぼくは幽霊作家です』(新泉社)、鄭智我『歳月』(新幹社)、千雲寧『生姜』(新幹社)、李炳注『関釜連絡船(上・下)』(藤原書店)、朴婉緒『あの山は、本当にそこにあったのだろうか』(かんよう出版)、クォン・ヨソン『春の宵』(書肆侃侃房)、チェ・ウンミ『第九の波』(書肆侃侃房)、ウン・ヒギョン『鳥のおくりもの』(段々社)など。

関連書籍

  • 夜は歌う
  • 目の眩んだ者たちの国家FTP
  • 海女たち
  • 舎弟たちの世界史
  • ギター・ブギー・シャッフル
  • 〈戦後〉の誕生FTP