古代地方木簡のパイオニア 伊場遺跡

シリーズ「遺跡を学ぶ」127

古代地方木簡のパイオニア 伊場遺跡

  • 鈴木 敏則/著
  • A5判
  • 96頁
  • 1600円+税
  • ISBN 978-4-7877-1837-2
  • 2018.07.01発行
  • [ 在庫あり ]
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紹介文

静岡県のJR東海・浜松駅から西へ二~三キロほどに位置する伊場遺跡は、地方ではじめて一〇〇点を超える木簡がみつかったことで有名だ。この古代地方木簡のパイオニア的存在となった伊場木簡および墨書土器、祭祀遺物などから、律令制下の地方社会を明らかにする。

目次

第1章 木簡の発見
地中からあらわれた古代の文字
信じてもらえなかった最古の木簡
よみがえる地方郡家
伊場遺跡周辺の地形
伊場遺跡の発見
開発と保存のはざまで
伊場裁判とその後

第2章 伊場遺跡群の発掘
群としてとらえる
苦戦した発掘調査
伊場大溝は埋没河川
弥生集落としての伊場遺跡
古代伊場の前身集落
伊場遺跡の小貝塚群

第3章 広域に分散する郡家機能
伊場遺跡は郡厨か栗原駅家か
城山遺跡に郡庁か
梶子北遺跡は平安時代の郡庁か館か
鳥居松遺跡は郡津、九反田遺跡は郡寺か
敷智郡を支えた集落群

第4章 木簡が語る古代地方行政
敷智郡の大領は石山
年号が記された木簡から郡家の歴史をうかがう
古代地方役所と税
浜松の地名は「浜津」に由来
稲万呂は古代交易商人
古代東海道のルートは
古代の浜名湖と遠州灘
地方役所のぜいたく品
郡家で出された食事

第5章 郡家の地域産業振興
木製農具
漁撈と水運関係
調庸布の生産
鉄製品と鍛冶工房
木工生産
湖西窯の須恵器生産と流通

第6章 地方の古代祭祀
寺院の建立と仏教祭祀の浸透
祝詞と呪い
描かれた祈り
木製祭祀遺物
土製祭祀遺物
伊場遺跡のこれから

出版社からのコメント

律令制度が従来考えられていたよりも早い時期から地方に浸透していたことを、木簡から実証した記念碑的遺跡です。郡衙(群庁舎)の遺構は明らかになっていませんが、租税の徴収から地域産業振興、地方の古代祭祀が木簡からわかり、古代を語る上で欠くことのできない重要な遺跡です。

著者紹介

鈴木 敏則(スズキ・トシノリ)

1957年、静岡県湖西市生まれ。奈良教育大学教育学部卒業。
前浜松市博物館館長。
主な著書 「遠江における原始・古代の紡織具」『浜松市博物館館報』第12号、浜松市博物館、「静岡県の土製模造品」『土製模造品から見た古墳時代の神マツリ』山梨県考古学協会、「伊場遺跡群と古代木簡」『考古学ジャーナル』2009年6月号(地方木簡と遺跡の現状研究)、「伊場遺跡群の最新情報と古代の地名」『伊場木簡と日本古代史』六一書房(考古学リーダー17)、「伊場遺跡群と古代敷智郡家」『静岡県考古学研究』41・42号、静岡県考古学会、「須恵器の編年 東日本」『古墳時代の考古学Ⅰ 古墳時代の枠組み』同成社、「静岡県伊場遺跡群と遠江の古代交通」『日本古代の道路と景観─駅家・官衙・寺─』八木書店ほか。

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